看護婦さんと飲みに行った

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去年の4月から約1年半、音信不通になっていた看護婦さん。当時のブログにも書いたあの看護婦さんから突然連絡があった。久しぶりに飲みに行こうという話になって大久保で待ち合わせをした。

看護婦さんと飲みに行った

大久保にあるインドカレー屋に入って、生ビールとマリブコーラを注文した。私は夕飯を済ませていたのでお腹いっぱいだった。彼女も焼き鳥とラーメンを食べたということで注文はアルコールのみ。店員のインド人らしき人が「これはサービスです」といって、わけのわからない茶色いおつまみを出してくれた。食べてみると香辛料がたくさんまぶしてある、お新香のような食べ物だった。

 

彼女とは1年半ぶりに会う。私は複雑な気持ちだった。それは最後、音信不通になったことだ。私との連絡を完全に断っていた。ラインはブロックされ、電話しても出なかった。なのに今さらになってどうしたというのだ。そんな私の疑念を払拭するかのように、彼女は重い口を開いた。

 

「お父さん死んじゃった」、、、。私、まさかと思ったね。彼女の母親が亡くなったのは知っている。ちょうど1年半前に彼女と連絡が取れなくなる少し前、彼女からそう聞かされていたからだ。今、目の前でマリブコーラを飲んでいる彼女の話はこうだ。母親が亡くなって、僅か半年後、今度はお父さんが癌に侵され余命6ヶ月と診断。彼女は勤めている新宿の病院に無理を言って、長期休暇を取り、急きょ福岡の実家に戻る。一人で身の回りの世話や介護をしながら、父親の最後を一人で看取る。明け方4時、隣で寝ていた彼女は、父親の異変に気づき、声を掛けた。父親はそのときかなり吐いていた。そう語る彼女は時折り看護師特有の専門用語を交えながら、詳細にそのときの状況を私に説明してくれた。私はただ黙って頷いて聞いていた。と、そのとき、突然猛烈な腹痛が襲ってきた。「ちょっとトイレ行ってくる」私は話の途中でトイレに立った。トイレは私たちの席の真横にあった。私の腹は、もはや限界に達していた。う、ブリブリブリビリ!は、腹がー。原因はあの香辛料たっぷりの謎のおつまみだ。あれに違いない。それとクーラーの冷たい風と冷たい生ビールが…。何分、トイレに籠っていたかはわからない。デートではないにしろ、女性との飲みの席、隣の便所でうんこする。これは紳士としてやってはいけないことだ。たぶん音は聞かれてはいないとは思うけど、、、。長い便所から出た。私は腹を抑えながら明後日の方向に視線を向けていた。そんな私を見かねてか、「長かったね、、、うんこ?」と、彼女は私に質問してきた。

 

うんこを終えた私は、すっきり顔で途中だった彼女の話を聴いた。私のうんこには、それほどお構いなく、彼女は最後、お父さんが亡くなった瞬間の話をしてくれた。途中途中、涙ぐむ彼女、「私ね、お父さんが亡くなったときにお父さんに言ったことがあるの」と、続けて「最後、呼吸が止まって、お父さん大丈夫?って言って、苦しそうに顔をしかめたのを見て、私はもう大丈夫だから心配しないで天国に行ってねって言ったの」。お父さんに最後、私の声届いたかな、、。と聞かれたので、私は「届いたと思うよ」とだけ言った。

 

店を出て、新大久保駅で彼女と別れた。彼女が突然今ごろになって、なぜ私に連絡してきたのか?それはこの話を聴いて欲しかったんだと思った。どんな経緯があろうと娘に看取られながら死んでいった父は幸せだったに違いない。娘の最後の言葉が届いていますように。私は祈った。