遊びまくる!

無職ブロガーのカオスな日記

壁にハンマーで穴をあけた友達

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人間と人間のあいだにひとつの壁があった。

部屋と部屋を区切る壁は目の前にある、立派な壁だ。

丸顔の家

壁はモノの影を映す。光の角度によって影の姿も変わる。

私はその濁った影をぶち抜いて隣の部屋との堺をなくそうと思い立つが、バカなことをしてはいけないと我に返った。そして過去を振り返った。あれはたしか私が20歳のころ、友達の家を久しぶりに訪ねたときのことだった。

 

同い年の友達の家は山間にある2階立ての古民家だった。急な坂を下り、玄関を開けて中に入る、ふっと古木の饐えた匂いがした。靴も脱ぎ散らかっている。奥の間のふすまから光がもれ、テレビの音が耳に入ってきた。私はふすまを開けて声をかけた。こたつから顔を出して友達の丸顔が笑顔を見せた。ここでいくつか言葉を交わしたのだが覚えていないので割愛する。

2階

私は一人で2階に上がった。2階は丸顔の妹の部屋と両親の寝室がある。私は部屋を見るなり絶句した。足元には雑誌が散乱している。薄暗い妹の部屋には家具やゴミが折り重なり、両親の部屋も同じようなありさまだった。そして私が絶句した理由がわかった。二つの部屋を隔てる壁に大穴が開いているのである。私は恐る恐る穴に近づいた。床には粉砕された壁材が白くなって散っている。穴の周囲を触ってみた。壁材のごつごつとした感触が伝わってくる。風が抜けた。穴の向こう側には両親のダブルベットが鎮座していた。

 

マンガGTOの学園ドラマに壁にハンマーで穴を開けるシーンがある。私はそれを思い出して苦笑いした。丸顔は両親と妹の部屋をハンマーで粉砕して穴をあけた。理由は聞いてみないとわからないが、冗談にしてはやりすぎではないか。穴はちょうど人間が少しかがめば通れるほどの大きさだった。私は穴を通って両親の部屋に出た。妹の部屋ほど荒れてはいないが、薄暗くやけに埃っぽかった。長居は無用と階下に降りた。

 

丸顔は相変わらずこたつでテレビを見ていた。

壁の穴

「部屋どうしたん」

「ぶっこわした」

「どうやって?」

「大ハンマーで」

「なんで?」

 

理由は長くなるので割愛するが、要約すると父親と妹と喧嘩したらしい(母親は離婚してすでに家を出ていっていた)。GTOの話もしてみたら「まーね」と笑いながら言っていたから影響は受けていたのだろう。

 

それからも私はちょくちょく丸顔の家に遊びに行った。行くたびに部屋は荒れていった。父親と妹は仲良く1階にある部屋で暮らしていた。2階には誰も行っていないようで、丸顔はそれ以来あまり家には帰って来なくなったと父親と妹から聞いた。

 

そのころ丸顔は結婚して子供ができた。現在は10年以上会っていないのでどうなっているかはわからない。

 

壁と壁とのあいだにできた穴は、妹と父親の隔たりをなくした。丸顔の屈託にみちた笑顔が懐かしい。